「STANCE or DISTANCE?」展 金川晋吾さんアーティストトークを行いました。
10月11日「STANCE or DISTANCE?」展の関連プログラム「金川晋吾《father》上映+アーティスト・トーク」を開催しました。
会場で展示している金川晋吾さん《father》の作品群は、失踪を繰り返す父親が2008年頃に「久しぶりに大きな蒸発」をしたことをきっかけに、社会からドロップアウトするかもしれない状況にある父親をモデルにした作品です。積極的に被写体になっている父親に見えますが、金川さんは「あまりに受動的であるが故に積極的」と言います。 その後、父親は新しい住まいを得て家族の危機的状況は落ち着きますが、金川さんは父親をテーマに作品を撮り続け、しだいに関係性は変化していきます。その中で生まれた55分間にわたる映像《father》を今回のアーティスト・トークでは上映しました。(アーティストトークで上映した映像作品は、展覧会場で上映している《father 2008.12.08》とは別の映像作品です) この映像作品は、金川さんの《father》が本として出版することになり、父親をテーマにすること、そして父親が撮った約1300枚にのぼる写真もあわせて掲載しても良いか、そして世の中に出すことをどう思うかを確認するために撮影したものです。 本の出版に対して、良いとも悪いとも言わず、また家族問題の核心に触れる失踪に対して、どう思うか尋ねてみても、「覚えてへん(覚えていない)」を繰り返す父親。 しかし、その時期の金川さん自身の日記を読み返すと、自分自身もそんなことがあったのかと思い出す所があり、父親だけでなく自分自身も覚えていなかったのか、と気づかされることもあるそうです。 家族を題材にすることについて、自分のつながっているものを探究するためにおこなう作家もいますが、金川さんは「つながりを求める部分はあるが、コミュニケーションをしているわけではない。」「他者として扱い、自分とは違う存在とどう対峙するか」という視点で、父親と向き合っています。また、色々なことに興味がない父親を写真に撮ることに対して「内面のやりとりを必要としない写真を撮るという行為によって、不毛なやりとりを繰り返さない。」とも語りました。 父親と息子、という立場であっても、それは他者であるという姿勢にたって作品を発表する金川さんは、今展覧会のテーマでもある「隔たり(DISTANCE)があるからこそ人と繋がれる。自分の立ち位置(STANCE)で人との距離がのびたり縮んだりする」というメッセージに共通する、人との距離の取り方の一つの象徴といえるかもしれません。
| STANCE or DISTANCE?展 | 02:00 PM | comments (x) | trackback (x) |
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