カレンダー
日 月 火 水 木 金 土
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
前月 2026年10月 次月
PROFILE
NEW ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
LINK
OTHER

5月11日

プロジェクト2日目は、中心部からやや離れた住宅街にあるChisenhaleに伺い、ディレクターのPolly Stapleのレクチャーを受け、Melanie Gilliganのヘッドフォンとマルチ・スクリーンの映像作品をまずチェック。

展示室は、CAMKで言えば、ギャラリー�兇鮠�し狭くした程度。決して大きくないスペースですが、ターナー賞の選定メンバーを務め、「ディレクター(日本でいえば館長)だけど、資金集めも、ランプの交換も、なんでもかんでも自分でやってるのよー!」という気さくな雰囲気ながら、ロンドンのアート界で存在感を持つPollyのセレクトとあって、内容・クオリティも素晴らしいものでした。

中でも、個人的に注目したのは、立派なティーチャーズ・キットが展覧会ごとに準備されていること。エデュケーション専門のスタッフが毎回ホームページにアップして、過去のものもすべて見ることができます。当館でも、地域の先生方を対象に、年度始めのインフォメーション、オープニングに招待、展覧会の無料観覧などを行っていますが、近年の教育制度改革のあおりもあって、大きな効果が得られていないのが実情です。

しかも「ハードルが高い」と感じられがちな現代美術を活動の中心にすえていることも、非常に勇気づけられました。(もちろん、ターナー賞が世間の話題にのぼるほど現代美術が「根付いている」という文化の差はありますが)しかし、それも地域におけるアートスペースの「存在意義」がそのまま「資金」と結びつくという実情がやはりあります。

ちょうどギャラリーを出ると、近くの小中学校は昼休みで、うるさい程の賑やかな声が聞こえてきました。その声を聞いて、「よし、熊本に帰ったら真っ先にティーチャーズ・キットの見直しを行おう!」という決意を新たにしたのでした。

次に訪問したのはChisenhaleのそばにある、The Approachという商業ギャラリー。ここがユニークなのは、なんと1階が同じ名前のパブになっていること。ギャラリーとカフェというのは日本でもよくありますが、ギネスを飲んで現代美術を鑑賞、というのも、とても良い環境のように感じました。(オーナーは「なかなかパブの客はこないけどね」と笑っていましたが)熊本でやるならば、立ち飲み焼酎バーと現代美術、なんていうのもいいかもしれませんね!

その後、もともとはロンドン動物園で行われたのがきっかけとなった、現代美術フェアZooArrFairのディレクター、Soraya Rodriguezにその歴史と現状を聞きました。日本でもアートフェア東京などの見本市が徐々に形成されていっていますが、日本ではいわゆる現代美術の大コレクターというのは、どうしても限られてくるのが現状です。もしかすると、その軸足は、東京/日本という範囲ではなくアジア全体を商圏として捉える必要があるのかもしれません。

そして、本日最後の訪問先は、ホワイトチャペル・アートギャラリー。ピカソのゲルニカをいち早く展示するなど英国現代美術の歴史の先導し、非常に刺激的で先鋭的な展覧会を行うことで知られる美術館です。そのシニア・キュレーター、Achim Borchardt-Humeに話を伺いました。

そのなかで、興味深かったのは、教育プログラム。10年程前、学生時代に美術館教育を学んでいた頃、イギリスそしてアメリカといった多数の移民を抱える国家において、マイノリティとよばれるアフリカ系、アラブ系、アジア系のコミュニティに、美術館が出かけていって話をする。また、そこから人々を美術館へと’つかんで’ 連れてくる、アウトリーチの考え方が日本にもたらされ、たいへん感銘を受けたものでした(その‘つかんで’というニュアンスの中に「自国民としての教育を施す」平等主義やポリティカリー・コレクトネスを感じないわけではありませんが)

ここホワイトチャペルでも、プログラムとしての目立った目新しさは変わりないものの、きちんとした部門を構え、展覧会に即した教育プログラムが継続的に行われています。既に決定され権威づけられたいわゆる「美術」を知ることだけでなく、現代美術の最も優れた要素のひとつである「新しい価値観を知る」ということを、美術館の中で組織的・継続的に行っていくことは、現代美術や美術館のオーディエンス(観客、その理解者・支持者)を育てていくことだ、というヴィジョンを改めて思いおこさせました。

実は、既に、この時点でお腹いっぱいプログラムをこなしているのですが、なんとここでは終わらなかったのです。この日は、夕方7時から、日本の国際交流基金のロンドン支所主催によるフォーラムに、参加した8名のキュレーター達が自館の活動内容を紹介する、というイベントが用意されていたのでした。

日本の現代美術への興味が非常に高いことを物語るように、インフォメーションをはじめて2,3日でなんと160名を超える申し込みがあったそうで、会場は入りきれない程の満員のお客様。しかも画像を使って英語でのプレゼンテーションのため、胃は痛くなるばかりです。。

プレゼンの内容は、タレルやマリーナといったおなじみのCAMKのアートワークのほか、開催中の「祝祭と祈りのテキスタイル」から、大漁旗(その迫力にため息がもれていました!)や江戸の幟、ドンザ、現代美術の作品を紹介し、私のつたない英語でしたが、無事プレゼンを終えると会場から温かい拍手をいただくことができました。イギリスの皆さんにもぜひ熊本に来ていただきたいものです!
| その他 | 02:50 PM | comments (x) | trackback (x) |