九州で活躍する若手アーティストを紹介する展覧会「アーティスト・インデックス」。
第3回目となる今回は、川嶋久美・小林駄々・宮本華子・冨永ボンドの4名をご紹介します。
初日の8月8日には、「全員集合!開幕アーティストトーク」を開催し、それぞれのこれまでの活動や今回の出品作についてお話いただきました。

トップバッターは川嶋久美さん。
河原町を拠点に活動し、「河原町アートアワード」では毎年受賞を治める実力派です。
トークでは、自らの「巣」を作ってまちを移動した《巣と旅する》を始めとするこれまでの作品・活動から、今回のインデックス展出品作までをご紹介いただきました。
今回の展示では自分の昔の記憶をテーマに、学校の教室をモチーフにしたインスタレーションを手掛けられています。
うつろっていくのが惜しく感じるほどに楽しかった日々、自分の頭の中の記憶と実際の記録の微妙な齟齬など、作品の発想のもとになったものごとをトークではひとつひとつお話しいただきました。

 


川嶋さんと同じく、河原町を中心に活動されている小林駄々さん。
髪の長い女性を描く作品が多いので、自画像を描いているのかと思いきや、実は自分が綺麗だと思ったアイドルなどをイメージして描いているとのこと。
自分の感情をベースにして制作し、目を背けたくなるような人の醜い感情や欲望をそのまま描き出そうとしているという小林さん。
それらの感情の混ざり合いが、かわいさと不気味さと迫力を同居させた独特の画面につながっているようです。
「目」をたびたび描いていることについては、自分自身が人から見られることへの忌避感があり、その一方で自分の作品は見てほしいという願望はある、という視線への強い関心が背景にあることを語ってくれました。

 


第26回熊本アートパレードで「審査員特別賞(三潴末雄賞)」を受賞した宮本華子さん。
父との軋轢とその葛藤を出発点に制作してきたこれまでの作品について、構想段階の関心の移り変わりにも言及しながら丁寧に紹介していただきました。
近年は結婚とそれに関わるものごとに強い関心を持ち、本展でもウェディングドレスを用いた作品を出展されています。
父と向き合うための作品をはじめ、宮本さんにとって作品制作はコミュニケーションのための手段でもあったようです。
今回の出品作の一つ、周囲の人たちが宮本さんに対して持っている印象を集めた《宮本華子 肖像画を装った自画像》も、「作品を通してのコミュニケーション」が一つの大きな要素となっています。

 


最後のスピーカーは、木工用ボンドで絵を描く世界で唯一のボンドアーティスト、冨永ボンドさん。
自身が目標としていることと、そのために行っている活動の数々を、鮮やかなスライドを用いつつテンポよくご紹介してくれました。
アーティストを増やし、シーンを活性化させる。そのためにライブペイントを行い、人々に興味を持ってもらう。アートスタジオを運営し、活動の場を作る。
医療とアートをつなぎ、人の生活を豊かにする。そのために多くの福祉施設などでアートセラピー・ワークショップを行う。
明快な目的意識と縦横無尽の行動力が、力強く伝わってくるプレゼンテーションでした。

 


[アンケートより]
作品からだけでは伝わらないアーティストさんの思いや動機など裏話が聞けて楽しかったです。私自身では想像もできないような発想に、素直に“この人たちの頭の中はどうなっているのだろう?”“凄い”と思ってしまいました。

| G3/井手記念室 | 05:00 PM | comments (x) | trackback (x) |