当館インターナショナル・アドバイザーのパラント・ハウス・ギャラリー学芸員サイモン・マーティン(Simon Martin, Assistant Curator, Pallant House Gallery)氏をお迎えして、日本に投下された原爆やその後の核の脅威が、芸術家にどのような影響を及ぼしてきたかをテーマにお話いただきました。

 「リトル・ボーイ」展やイサム・ノグチへの言及から始まった講演は、ダリやポロック、ウォーホール等、多数の著名な作家の分析も交え、核時代のアートを通史的に辿っていきます。今回は主にヨーロッパとアメリカからの視点で、核を扱った美術や映画、核軍縮運動ポスター、あるいは核兵器の芸術家への影響などが取り上げられました。ポップ・アートにおいて消費文化のなかの大衆的なイメージとなってしまった「きのこ雲」や観光化したネバダの核実験のポストカードなど、日本における核や原爆のイメージとの相違も興味深いものでした。欧米の美術における核への複雑な眼差しを浮き彫りにしつつ、翻って日本の美術における核への眼差しの在り方を考えさせる刺激的な講演でした。

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