水戸岡鋭治氏と幸山政史・熊本市長を迎え、「まちと人を幸福にするソーシャル・デザイン」をテーマにした対談を行いました。



水戸岡氏は、熊本市電開業90周年を祝して10月より運行する新しい市電「COCORO」のデザインをされましたが、そのリサーチとして、昨年熊本の沿線をまわり、また幸山市長による江津湖の案内を受けました。その時の熊本のまちの印象や、「COCORO」に込めたデザインについて話されました。

水戸岡さんいわく、熊本の人は、これほど豊かな環境に身を置いているのに、その豊かさの有難さになかなか気付いていないのではなかとのこと。この豊かさの活用提案として、展覧会で展示中の江津湖の活用案を描いたパネル60枚のプレゼンテーションについて言及し、まずは出来たらいいなという気持ちを思い描くことが肝心であり、まちづくりとは、「行政の意識、社会の意識、市民の意識」が同じ方向性を向くことが重要、行政に任せきりにするのではなく、まちに住む人々が自分のまちをどうするのかを真剣に考えることによって初めて成り立つと、オーディエンスの皆さんに発破をかけます。

これを受けて、幸山市長は、熊本の水資源の豊かさをどのように市民と守り、また活用して外にもアピールしていくのかが重要、とこれまでの自治体としての取り組みについて話されました。
また、リーダーシップに求められるバランス感覚について述べながら、城下町であった古い歴史をもつ新町、古町に400軒残る町家を残す取り組みをしている市民活動を例に上げ、市民の間に広がるまちへの意識について言及し、行政と市民が一体となって、まちづくりに励んでいきたいと語ります。そして、この対談の後には、町屋研究会主催による新町、古町のシンボルマークの最終コンペが行われる予定です。



市民が自分のまちを盛り上げるには、何が求められるのか。お二人の対談から導き出されたのは、子供の頃からの教育によって自分の住むまちについて考える意識付けを行い、主体的に考えてディスカッションする力を付けること、そして自分たちを取り巻く環境について敏感に感じ取られるよう五感を磨くこと、リーダーはまちのヴィジョンを市民と共有できるよう行政と市民が話し合いを求める場を創出していくこと。

大盛況となった会場ですが、今日の対談を聞いて、皆さんはどのようなことを感じ、考えられたのでしょうか。
美術館では今回初めて、本格的にデザインを扱う展覧会を開催することになりましたが、皆さんの熱心に耳を傾得る様子を伺いながら、これからも幅広い創造的活動を紹介し、市民の皆さんと一緒に考える機会を設けていきたと思いました!

| 水戸岡鋭治展 | 06:00 PM | comments (x) | trackback (x) |