秋に開催する「Stance or Distance? わたしと世界をつなぐ距離」展。
目には見えないけれども、確実に存在する“距離”や、日々の生活のなかで生まれる“距離感”。
この“距離”や“距離感”があるからこそ、近くにいる家族や恋人、友人、社会の出来事、あるいは遠い海の向こうの世界にも向き合ったり、想像を膨らませたりすることができるのかもしれません。“距離”が生まれる背景を肯定的に捉え、私たちと世界をつなぐ多様な‘距離’について考える展覧会です。

この展覧会へ参加される作家さんの準備も進んでいます!
今回は林智子さんが、秋の新作に向けてのリサーチに熊本を訪れました。



林さんは、“距離”をテーマに、現代のテクノロジーと人間がもつ五感が共生する作品を発表してきました。離れた場所にいる遠距離恋愛のカップルが、恋人のことを想い浮かべながら指輪をはめて身体の上をなぞると、その動きが光の痕跡となって相手の身体に浮かび上がるリアルタイムな触れ合いをテーマとした「Mutsugoto」は、実際に体験することができるインタラクティブ作品です。


林智子 《Mutsugoto》

他にも、彼女が香水を体に放つと、遠くにいる恋人の襟裳から同じ香りの香水が微量に放たれる「SentSense」や、恋人の好きなパーツを型どり、口にすることで相手を思い出す和三盆の「Tamayura」、大切な人との間にある距離とテクノロジーの関わり方について尋ねたオンラインアンケート「Distance」などがあります。

熊本にルーツがある林さんは、今回の新作のために、大好きだった祖父の熊本での足跡を辿りました。彼女の祖父は熊本で育ち、阿蘇で人生の転機を掴んで、京都で学生時代を過ごした後、地質学の調査で世界中を回りました。林さんも留学を経て、スコットランドやニューメキシコでの滞在制作など海外で長い時間を過ごし、現在は京都で活動を行っています。そして本展のために熊本を訪れるという、祖父が過ごした場所をリバースしているかのような移動。それは、まるで時間と距離を遡る旅のようにも思えます。

今回のリサーチでは、南阿蘇の「京都大学火山研究センター」を訪問。当時おじい様が施設の設立に関わり、また阿蘇の写真を多数撮影していました。その写真を林さんが大切に保管されていたことが新作の構想のきっかけとなりました。火山研究センターでは、祖父が勤務していた当時の仕事部屋や測量機械を見学し、阿蘇山の岩石や硫黄などもサンプルとして持ち帰ります。実は、彼女もニューメキシコに滞在した時に、その鉱石に不思議なエネルギーを感じ魅せられているそうです。阿蘇周辺をまわった後は、祖父の生家を訪れ、その痕跡をじっくり確かめます。

 

これから作品の構想に入られます。どの断片が作品化されていくのか。また林さんとおじい様の時間的、場所的距離がどう表現され、作品としてつながっていくのかが楽しみです!

| STANCE or DISTANCE?展 | 04:00 PM | comments (x) | trackback (x) |