LOVE ファッション―私を着がえるとき
2024.12.21(土)〜 2025.3.2(日)
服を着ることは人間の普遍的な営みの一つです。そして装いには私たちの内なる欲望が潜み、憧れや熱狂、葛藤や矛盾を伴って表れることがあります。着る人のさまざまな情熱や願望=「LOVE」を受け止める存在としてのファッション。そこには万華鏡のようにカラフルな世界が広がっています。本展では、京都服飾文化研究財団(KCI)所蔵の衣装コレクションを中心に、人間の根源的な欲望や本能を照射するアート作品とともに、ファッションとの関わりにみられるさまざまな「LOVE」のかたちについて考えます。展覧会を通して、服を着ることの意味について再び考えてみませんか。
会場構成
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Chapter 1.自然にかえりたい
人類最初の衣服は、自然界からもたらされました。その記憶を引き継いでいるのか、私たちは毛皮の肌触りと温もりに酔いしれ、鳥の羽根で着飾り、色とりどりの花々に身を包みます。文明や技術が高度に発達した今日においても、自然に対する憧れや敬愛、身にまといたいという願望から多種多様な衣服が生み出されています。本展の始まりを飾るチャプターとして、歴史の各時代に現れた動物素材や植物柄のファッションを展示。華やかな花柄が刺繍された18世紀の男性用ウエストコート、20世紀前半に流行した鳥の羽根やはく製が飾り付けられた帽子、毛皮不使用や環境保護を標榜するエコファーのコートなどに加えて、人間の毛髪を素材とした小谷元彦の作品を展示します。
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Chapter 2.きれいになりたい
日々、美への憧れや挫折に翻弄される私たち。顔より大きく膨らんだ袖、締め上げられてS字型になったウエスト、歩きにくいほどに広がるスカート。「きれいになりたい」という願いは、ときに偏執的ともいえる造形への欲望を伴い、衣服の流行をつくりあげてきました。このチャプターでは、19世紀の身体美の要を担ったコルセットや、布地の芸術作品として卓越した造形で魅惑するクリストバル・バレンシアガなど 20世紀中葉のオートクチュール作品を中心に展示。ヨウジ・ヤマモトやジル・サンダーなどの彫刻的な現代ファッションとともに、衣服のかたちに現れた多様な「美しさ」の創造力をご紹介します。
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Chapter 3.ありのままでいたい
社会の中で様々な役割を担いつつ生きる私たちの、「ありのままでいたい」という願望。その切なくも慎ましい願いは、例えば18世紀末にフランス王妃マリー・アントワネットが好んだというシンプルな王妃風シュミーズ・ドレスから、あるいは平凡さを肯定的に容認する現代服のなかから、探り出すことができます。このチャプターでは1990年代以降にプラダやヘルムート・ラングらが牽引した、自然体の体を主役にするミニマルなデザインの服や、ミニマル・ファッションの究極系とも表現できる、いわゆる「下着ファッション」を中心に展示。展示された服たちは、身近な友人との日常を切り取ったヴォルフガング・ティルマンスの写真や、現代社会を生きる女性のリアルを描写した松川朋奈の絵画と響き合います。
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Chapter 4.自由になりたい
国籍や階級など、様々なアイデンティティにより形成される「私らしさ」。そんな「らしさ」のお仕着せから逃れたい願望は、ときに衣服に託されます。ヴァージニア・ウルフは小説『オーランドー』(1928年)において、300年の時の中で性や身分を越境する主人公の変身譚を、度重なる衣服を「着がえる」描写とともに著しました。このチャプターでは、アイデンティティの変容を描いた本作に触発されたコム・デ・ギャルソン 2020年春夏コレクション、コム・デ・ギャルソン オム・プリュス 2020年春夏コレクション、川久保玲が衣装デザインを担当したウィーン国立歌劇場でのオペラ作品《Orlando》(2019年)の「オーランドー」三部作を一挙に紹介。異なる時代に制作された文学と衣服に通底する、アイデンティティの物語への普遍的な問いかけを探ります。
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Chapter 5.我を忘れたい
こんな服が着てみたいという願望、あの服を着たらどんな気持ちだろうという期待、はたまた欲しかった服に袖を通したときの高揚感。トモ・コイズミによるフリルとリボンを用いたモビルスーツのような愛らしい作品や、ロエベによるまるで唇に私の身体が乗っ取られてしまったかのような作品たちは、こうした服を着ることの一瞬のときめきや楽しさを伝えてくれます。服は私たちに魔法をかける(服が私たちを魅了する)。ただ、そんな服もある瞬間には急に色褪せてみえ、私はまた別の新しい服を求めてしまいます。AKI IMONATA の《やどかりに「やど」をわたしてみる》に登場する「やど」を着替えるヤドカリたちに、私たちは人間の際限のない欲望の姿を仮託し、あるいはより深い生物の本能のつながりをみているのかもしれません。
主な出品作品
18世紀から現代まで幅広い時代のファッションを研究・収集する京都服飾文化研究財団(KCI)が厳選した衣服作品、そして人間の根源的な欲望や本能を照射するアート作品で構成。
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帽子(キャノティエ)
1907年頃 © 京都服飾文化研究財団 撮影:広川泰士 -
J・C・ド・カステルバジャック(ジャン=シャルル・ド・カステルバジャック) コート
1988年秋冬 © 京都服飾文化研究財団 撮影:来田猛 -
バレンシアガ(クリストバル・バレンシアガ) イヴニング・ドレス
1951年冬 © 京都服飾文化研究財団 撮影:畠山崇 -
コム・デ・ギャルソン(川久保玲) ドレス
1997年春夏 © 京都服飾文化研究財団 撮影:畠山崇 -
シルヴィ・フルーリー 《No Man’s Time》
2023年 スプリュース・マーガース蔵 © Sylvie Fleury Courtesy of the artist and Sprüth Magers -
ゴルチエ・パリ・バイ・サカイ ドレス、シャツ、Tシャツ、レギンス
2021年秋冬オートクチュール © 京都服飾文化研究財団 撮影:守屋友樹
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ヘルムート・ラング(ヘルムート・ラング) ドレス
2004年春夏 © 京都服飾文化研究財団 Helmut Lang寄贈 撮影:守屋友樹 -
ヴォルフガング・ティルマンス《Kyoto Installation 1988-1999》
2000年 京都国立近代美術館蔵 撮影:浅野豪
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コム・デ・ギャルソン(川久保玲) トップ、スカート
2020年春夏 © 京都服飾文化研究財団 -
アレキサンダー・マックイーン(アレキサンダー・マックイーン) ドレス
2010年春夏 © 京都服飾文化研究財団 撮影:来田猛 -
ヨシオクボ(久保嘉男) オーバードレス、シャツ、パンツ、レギンス 2023年春夏 © 株式会社groundfloor 撮影:Tetsuo Kashiwada -
ソマルタ(廣川玉枝) ボディウエア スキンシリーズ《PROTEAN》 2007年 © 京都服飾文化研究財団 撮影:来田猛 -
ロエベ(ジョナサン・アンダーソン) ドレス 2022年秋冬 © 京都服飾文化研究財団 撮影:来田猛 -
AKI INOMATA《やどかりに「やど」をわたしてみる ‒Border‒(ニューヨーク)》 2010年 個人蔵 © AKI INOMATA
ファッション: Alexander McQueen(アレクサンダー・マックイーン)、 Balenciaga(クリストバル・バレンシアガ、デムナ・ヴァザリア)、 Bottega Veneta(ダニエル・リー)、 Céline(フィービー・ファイロ)、 Chanel(ガブリエル・シャネル、カール・ラガーフェルド)、 Christian Dior(クリスチャン・ディオール、ジョン・ガリアーノ)、 Comme des Garçons(川久保玲)、 Comme des Garçons Homme Plus(川久保玲)、 Gaultier Paris by sacai、 Givenchy(アレクサンダー・マックイーン)、 Gucci(トム・フォード)、 Helmut Lang(ヘルムート・ラング)、 House of Worth(ジャン =フィリップ・ウォルト)、 J. C. de Castelbajac(ジャン・シャルル・ド・カステルバジャック)、 Jil Sander(ラフ・シモンズ)、 Junya Watanabe(渡辺淳弥)、 Kostas Murkudis(コスタス・ムルクディス)、 Loewe(ジョナサン・アンダーソン)、 Louis Vuitton(マーク・ジェイコブス)、 Mame Kurogouchi(黒河内真衣子)、 Maison Margiela(ジョン・ガリアーノ)、 Nensi Dojaka(ネンシ・ドジョカ)、 Noir Kei Ninomiya(二宮啓)、 Noritaka Tatehana(舘鼻則孝)、 Pierre Balmain(ピエール・バルマン)、 Prada(ミウッチャ・プラダ)、 Ryunosukeokazaki(岡崎龍之祐)、 Somarta(廣川玉枝)、 Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)、 Thierry Mugler(ティエリー・ミュグレー)、 Tomo Koizumi(小泉智貴)、 Viktor&Rolf(ヴィクター・ホスティン、ロルフ・スノラン)、 Madeleine Vionnet(マドレーヌ・ヴィオネ)、 Yohji Yamamoto(山本耀司)、 Yoshio Kubo(久保嘉男) ほか
アート: AKI INOMATA、 ヴォルフガング・ティルマンス、 小谷元彦、 笠原恵実子、 澤田知子、 シルヴィ・フルーリー、 原田裕規、 松川朋奈、 横山奈美
展覧会情報
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展覧会会期:
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2024年12月21日(土)~ 2025年3月2日(日)
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休館日:
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火曜日、年末年始(12月30日から1月3日)、2月12日(水) * ただし2月11日(火・祝)は開館
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開館時間:
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10:00 ~ 20:00
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会場:
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熊本市現代美術館
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観覧料:
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- 一般:
- 1,300(1,100)円
- シニア(65歳以上):
- 1,000(800)円
- 学生(高校生以上):
- 800(600)円
- 中学生以下:
- 無料
*( )内は前売/20名以上の団体/電車・バス1日乗車券、市電緑のじゅうたんサポーター証、熊本県立美術館友の会証、JAF会員証をご提示の料金
* 各種障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳等)をご提示の方とその付き添い1名は無料
*うぇるかむパスポートをご提示の方は無料
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チケット取扱い:
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熊本市現代美術館
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主催:
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熊本市現代美術館[熊本市、公益財団法人 熊本市美術文化振興財団]、公益財団法人 京都服飾文化研究財団、熊本日日新聞社
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特別協力:
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株式会社ワコール
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協力:
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株式会社七彩、株式会社ルシアン、ヤマト運輸株式会社、吉忠マネキン株式会社
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助成:
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公益財団法人大林財団、スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団
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後援:
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熊本県、熊本県教育委員会、熊本市教育委員会、熊本県文化協会、熊本県美術家連盟、熊本国際観光コンベンション協会、NHK熊本放送局、J:COM熊本、エフエム熊本、FM791、在日スイス大使館
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巡回:
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京都国立近代美術館
2024年9月13日(金)~ 11月24日(日)東京オペラシティ アートギャラリー
2025年4月16日(水)~6月22日(日)
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特設ウェブサイト:
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プレスリリース:
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チラシ: