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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

「坂口恭平日記」 山下陽光「サカキョ展」展評(草稿)

2023.04.08 , , ,

サカキョ展めちゃくちゃ良かった。
いつもTwitterに流れてくる写真かな?絵かな?と思ってタップして画像が表示されるまでのポンっ、パッの間がとても良くて、おお海と雲良いな~水面がたまらんのぅ!とギスギスなタイムラインの癒しになってる。サカキョをフォローしてなくても誰かのRTで流れてくる。それくらいがちょうどいい。でっ、ネットで観てるのを確認しに行く感じと思ってそんなに期待してなかったんですが、行ったら逆だった。
パッと本物があって、そこから自分が近づいてポンになる。【>】 がTwitterなら展示は【< 】で逆方向なんすよ。

目が悪い人、メガネの人に朗報なんすけど、視力検査で景色がぼやけててクリアになっていくぬんぬんぬんする画像があるじゃないいっすか、アレ何なんすかね。
こっちの見えなさが何で機械に理解されてるのかよくわからんなと思ってたら0.2ですとか言われて気がついたら鳥山明が好きそうなメガネかけさせられてる。
あの感じを自分の体を使ってメガネ外して遠くから絵に近づいていって、絵と写真の中間の気持ちよくなる距離を自分で作りに行ける
描いた時間軸順に展示してあって最初の10枚目くらいだけ実験と試行錯誤があるんだけどそこから先はもうバシッと今のスタイルが完全にでき上がってて全部いい。
完成度が高すぎるから一枚一枚を評価できないんだけどモナリザ6000枚並んでる感じです。近づきすぎると絵なんだけど離れすぎたら写真にしか見えなくて、電気使ってないのになんでこんな感じに見えるのか?

ハイレッドセンターの高松次郎の影の絵があって女性の影が描かれてるんだけど絵じゃなくてそこにいるんじゃねぇの感が凄すぎて買えるもんなら買ってみたいけど100万円くらいするんだろうなぁとか、船田玉樹の《花の夕》ってタイトルの桜の絵があるんですが、これまた本物超えちゃう春かもねってくらいに良いんすよ。リアリズム描写ではないんだけど、50年以上前に描かれた桜なのに毎年、今年が初めてでございますってくらいのピンク色がびょんびょんな鮮やかさがある。
似てる絵ってことじゃなくてピントが合わなくなって気持ちを持っていかれる具合が似てて、この感覚にさらに近いのが森高千里が2000年頃に出した『Sava Sava』ってタイトルのアルバムが無表情の無機質な森高千里の顔面がギャンとあるだけで、発売当時タワレコやCD屋さんにキャンペーンでドドんと並んでるんだけどひょっとしたら全部違うかもしれないと思うほどに微量な違和感があって、これデザインやったの誰じゃい!
とネットが使えなかった当時『広告批評』って雑誌とかを見まくりながら、佐藤可士和って名前を初めて知ったんすよ。森高千里のアルバムは例外の違和感で、他の高松と船田のは現物を見てるから近いなぁと思える。
サカキョがすごいのは複製物であるかのようなテンションで量産するかの如く無茶苦茶描いてて全部クオリティが高い。そりゃ評価されないってか、したく無いんだと思うっすよ。

展示の映像を観てたら斜め後ろにサカキョが座った。

展示良いよ。視力検査の時に方向じゃなくてピントがボヤけた景色みたいなのが見えてきて、クリアになるあの感じに近い。見えていくような。

あ、そう。そうか。

山下陽光服売れてんの?

めちゃくちゃ売れてんのよ。

何人雇ってんの?

8人かな

凄いな、俺も美術館やってるから、雇ってるよ。何かやりたいんだけどまだ暮らすの大変な友達とか雇ってるよ。

おっ、いいねぇ。今はいろんなことが簡単になったから少し働いてバンバン独立してって欲しいね。なんて話す。

そろそろ行くわ~。

いや、ちょっと待ってよ。たくさんのモナリザの中から1番気になった絵について質問をする。ビニール袋が近づいたら無いんだけど、遠くに行くとちゃんとビニール袋なのよ。
近くだと絵だけど離れると写真に見えるね。なんなんだろうこの感覚。そんでいつもTwitterで観てるから、その感じが良いのかな。iPhoneのサイズ感とピッタリフィットしてると伝えたら。

俺は、iPhoneで描きたいと思ったところを写真に撮ってそれを描いてるから、iPhoneと相性は良いと思うと。

いや、違う。そうじなくて、見えてる世界がキチンとあって、描きたい景色もあると。そんでそれを写真に撮る。
そこで実はかなり完成していて、それをプリンターのサカキョが再現してるんだなと。だから、元になってる写真も素晴らしいはずだから次はこの景色の絵の元になった写真を展示しても面白いかもしれないし、これだけのデータがあるから、サカキョの絵になるアプリも作れると思う。それとサカキョが対決するのも面白いかもしれない。

6000枚の中から気になって本人に質問したのがまさかの外出たらプリントされて売ってんのよ。ジェットコースターで変顔したら出口でプリントアウトされてたり、別府杉乃井ホテルの宴会の時に写真撮りに来るな~と思ったら翌日販売されてる、キッザニアの写真も全部一緒や、あのスタイルか!いや、そうじゃ無いのよ、俺がたまたま気になったのがプリントされてんのよ、知ってたの俺が質問するって?
視力検査でピンぼけ風景がパシってあうようになるのは機械が俺を知ってんの?
君は僕を知ってんのてんのてんのの展覧会ですよ。
ベランダ広かですねぇ。

これ草稿です。もっと書きたいんだけどまだまとまらないので、展覧会終わる前に是非!

展覧会でも映画でも何でも事前情報知ってて知り尽くしていくのが良いのか、何も知らずに行くのが良いのかをよく考えるんだけど、今回のは画面から飛び出すし、自分とiPhoneの距離感を身体を使って変えに行くのがひっくり返えって面白かった。人もたくさん来てるのに美術界からはシカトされてるとちょいスネサカキョだったけど、、良すぎるのがただひたすら並んでてて、今回の展覧会を言葉にすんのはみんな嫌なんじゃないかなと。

大人気YouTuberが歌手デビューしたらバチクソに歌がうますぎてうますぎて、紅白もレコ大も全芸能界が全力で嫉妬してシカトしてるような。

でも、それじゃ無いんだよなってのを1番言いたくて、そこを書ききれてないので、草の稿で。

(山下陽光メルマガ2023/04/07 21:02配信より抜粋)

山下陽光


山下陽光(途中でやめる)
ファッションブランド「途中でやめる」主宰。新しい骨董メンバー。
坂口恭平『ズームイン、服!』(マガジンハウス、2015)に、「発見家・山下陽光の仕事に25世紀のハローワークを見る。」としても取り上げられている。
https://tochuyame.thebase.in/

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