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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

遠距離現在 Universal / Remote
[ワークショップ]見えないを埋める①

2023.10.21 , ,

「遠距離現在 Universal / Remote」に際して作成した学習帳(ワークシート)をつかって、ワークショップを開催しました。
今回はA4の大きな特別準備号のワークシートに並んだ4作品について取り組みました。

まずはじめは木浦奈津子さんの塗り絵。会場に展示されている何十点もの作品のうちの一点が、ワークシートの塗り絵になっています。作品を何かで見た記憶がぼんやりとある参加者の方は、思い出そうとしながら取り組みます。「確か青が……」と、青を塗っていきました。
実際の作品の鑑賞は後にとっておき、次のワークシートに取り組みます。

次はティナ・エングホフの写真作品《心当たりあるご親族へ――男性、1954年生まれ、自宅にて死去、2003年2月14日発見》をみて、この人はどんな人だったのか、タイトルの間の空白部分を書き込みます。
写真に写っているのは、ピンクの壁と床にたんすが一つ。とてもシンプルです。
強い印象があるピンク。ある参加者の方は、このピンクは写真のタイトルになっているこの人の趣味ではなく、家族の趣味で、家族がいなくなった部屋に暮らしていた、と想像しました。「男性、1954年生まれ、自宅にて死去、2003年2月14日発見」というタイトルからは、その人の最低限の情報しかわかりません。亡くなったときは親族のつながりが見えなくなっていても、それまでの人生の中で、家族や親族との関わりがあっただろう時間が、ワークシートを通して想像されました。

トレヴァー・パグレンの《吸血鬼(コーパス:資本主義の怪物)、敵対的に進化した幻覚》は、まさにそのタイトル通りのイメージを描いてみます。
まず、タイトルやそこに挙げられている言葉の意味について、改めて話し合いました。ワークシートには、おどろおどろしい言葉が例として並べられていますが、「そもそも資本主義とはなにか?」「日本でいえば、具体的にどんな人をイメージするか?」という話をして、政治家の名前やマンガのキャラクターの話などが飛び交います。なかなか描くのが難しい……ということで、今回は頭の中に思い浮かべるところで留めました。

チャ・ジェミンの2コママンガのようなシートでは、「つかれたー」から「こんなにこんがらがって!」と吹き出しの形のテンションに合わせてセリフを埋めていきました。日常的なつぶやきに近いからか、みなさんすらすらと取り組めました。

4つのワークシートに取り組んだ後は、会場で実際の作品を鑑賞。
うろ覚えで真ん中の丸い部分を灰色に、その周りを青に塗っていた木浦奈津子さんの作品は、実際はその逆。
木浦さんが、写真をみつつも実際の印象を大切にして距離をとってキャンバスに描くように、参加者の方も木浦さんの作品から「印象」を受け取って記憶していたようです。

後日、今回のワークショップでは取り組まなかった裏面の言葉を線でつなぐワークシート部分も取り組んでくれました。
ジェミンのケーブル作品のように、こんがらがる線を、色別にわけることで繋ぎ、カラフルなシートができあがりました。

【参加人数2人】

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