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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

「遠距離現在 Universal / Remote」館長挨拶

2023.10.06 , , ,

本日からはじまります展覧会「遠距離現在 Universal / Remote」。このタイトルを最初に聞いたときに、何か文学的なことや身体とかテクノロジーとか、様々なものの想像を掻き立てるタイトルだと感じました。距離感には、人と人の距離感とか、生まれた世代の世代間とか、物理的な距離感とかがあります。わたしは今、熊本市現代美術館の館長をさせていただきながら、自分の作家活動もして、故郷・岐阜の美術館の館長もして、教育機関である東京藝術大学の学長もして、それぞれ違うポジションの距離感というものがあります。距離があることによって、とてもものがよく見えてくるときと、距離があることによって、重ねにくくなって、ちょっと難しくなっていくときと、いろいろあると思います。

でも人間の力というのは、距離感を自分の中でコントロールすることができる。テクノロジーに頼ってコントロールすることもできますし、自分の気持ち次第でコントロールすることもできる。その距離感がコントロールできなくなったときに、パニックに陥ったりとか、将来のことや過去のことが想像できにくくなったりすることがあると思います。

熊本でも震災がありました。日本の中では東日本大震災という大きなことがありました。いまだにロシア、ウクライナでは距離感、分断があります。そういうものを人間の想像力によって繋いでいくことができる。人間の想像力を一番発揮できるアートという領域において、様々な距離感を繋いでいったり、逆にその距離感をしっかりと確認したりすることが、アートの役割だと思っています。

今日は3名の作家(井田大介、地主麻衣子、木浦奈津子)が訪れて、起ち上げ館である熊本市現代美術館で、自分の作品の設営に立会いました。作家個人とグループの距離感も一つの表現として、担当学芸員の方々と一緒になって、一つの展覧会をつくっていきました。そして、国立新美術館・逢坂館長、広島市現代美術館・野中副館長、各学芸員の方々、みんなのいろいろな様々な距離感が織りなして、この展覧会ができてきてるんだなと実感いたしました。

熊本、東京、広島という三つの距離、またそこに鑑賞に来るそれぞれの地域の人たちからは、距離を感じさせないような、いろいろな発信が出てくるかと思います。この「遠距離現在」という展覧会が、現在(いま)を表す展覧会、そして未来に繋がるものだと思っております。

このあと、みなさんを展覧会会場にご案内させていただきますので、ぜひお楽しみいただければと思います。

明日は午前10時半から国立新美術館・逢坂館長と私と、このホームギャラリーで対談をさせていただきます。美術館の役割、今の街の中における、アートにおける、美術館の役割について、日々変容していますので、そのあたりの話もしていければと思っております。そちらの方も重ねてよろしくお願いいたします。

今日はおいでいただきまして、ありがとうございました。

日比野克彦

 

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