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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」
オープニングトークを開催しました!

2024.07.13 , , , ,

展覧会「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」オープニングトークの様子

7月13日(土)に「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」が開幕しました。
初日には本展の中心メンバーである山野アンダーソン陽子さん(ガラス作家)、三部正博さん(写真家)と担当学芸員によるオープニングトークを開催しました。
(須山悠里さんは都合により不参加となりました)

本展覧会はアートブックを制作する「Glass Tableware in Still Life(静物画の中のガラス食器)」というプロジェクトからはじまりました。グラフィックデザイナーである須山さんからの「本を作りませんか」という提案に、初めはピンと来なかった山野さん。いろいろな場面でガラスに注目する中で、美術館でみた絵の中の割れないガラスを羨ましく感じ「絵画や写真になれば長く存在できる。こういうものが本として残るのは面白いかも」と考えるようになりました。様々な実験を経て「画家から言葉でリクエストをもらい、それをもとにガラスをつくり、そのガラスを描いてもらう」「完成したガラスと絵画を写真におさめる」という流れを経てアートブックに収められました。

トークでは、やりとりをした18人の画家のうちから一部のエピソードを抜粋してご紹介しました。画家によっては途中でガラスを割ってしまったり、無くしたり……。「いいアイデアがあるから5点のセットグラスがほしい!」とリクエストされたのに、最終的に絵画には2点しか描かれていなかったり。ハプニングを含んだ山野さんと画家とのやりとりに、会場からも笑い声があがりました。

展覧会会場では、各作家とのやりとりを抜粋した手がかりとなる資料を配布しています。熊本会場のメインビジュアルにもなっている、マリーア・ノルディンの静物画《Plateau》では、ピンクのハイヒールによってガラスが踏みつけられています。山野さんとマリーアの間でどのようなやり取りが行われたのかも、ぜひ会場でお楽しみください。

三部さんは8×10(エイトバイテン)という大判カメラを使い、各画家のアトリエで撮影を行いました。スタジオで照明をセットしての撮影とは違い「今まで見たことない本になるだろうと思った。ガラスの流れるような液体のような表情を捉えたかった」と話されました。また「クリアガラスはその場の光を可視化しやすい」ことにも注目し、各画家のアトリエで事前に下見をして、どの時間帯のどの光で撮影するのがベストか検討。天気予報をみながらスケジュールを入れ替えたりと柔軟に対応されたそうです。
それぞれのガラスがどのような光の中で、どのようなまなざしで撮影されているのか、ぜひ注目してみてください。

山野さんはクライアントワークでも本プロジェクトでも、1種類のガラスをつくるにあたって納得するまで何十個という数を制作します。トーク終盤、質問コーナーでの「たくさん制作する中で、お気に入りを取っておきたいと思うことはありますか?」という質問には「できの悪いものを除くことはあっても、あえてお気に入りをみつけないようにしている。手放す勇気!」とご回答。そのほか「展示されているガラスは最後に誰のもとへ?」「ガラスそれぞれの表情は意図したものでしょうか?」など、複数の質問があがりました。

参加者に向けて山野さんから「この中でガラスを吹いたことある人はいますか?」と質問する場面も。日本はガラスよりも焼き物(陶器)が浸透していることもあり、スウェーデンと日本ではガラスと焼き物に対する印象が異なることにも触れました。
また、日本ではガラスは「涼やかな」「夏」のイメージをもつ人が多いですが、制作の場が身近なスウェーデンでは「熱くどろどろした」「冬」のイメージ。暗い時間が多い冬を、ガラスを使い、かすかな光やろうそくの灯りを溜め込めせて楽しむという、日本とは違うガラスの楽しみ方についてお話されました。

「ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家」は9月23日(月・振休)まで。
皆様のご来場お待ちしています。

[参加人数 45名]

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