くまもとアートポリス建築展2024の関連イベントとして、建築家の乾久美子さんによるトークを行いました。
乾さんは、公・共・私の中の、共(コモンズ:commons)に興味を持って、駅や学校などの公共建築に関わっておられるとのこと。「私」の人達が「公」の場を自分たちの責任で、自分たちが使いやすいように工夫して「共」として使っていることを「小さな風景」と呼んで、事例を収集しておられます。そこから「コモンズをつくる」という意味で「コモニング」という言葉をつくり、建築家が設計した建築や空間が、使う人によってコモニングされることを前提とした空間作りをおこなっておられるようでした。
後半は、熊本の建築家でアートポリスのアドバイザーでもある桂英昭さんとのトークセッションを行いました。
桂さんからは、乾さんの建築や設計に込められた空間を把握するセンスが公共建築をコモニングする余白を生んでいることなどを解説していただきました。
一方で、管理する側としては、管理しやすい建築を求めがちであること。そこに風穴をあけようとし続けた建築家という存在があったからこそ、今の公共建築はワークショップなどで利用者の声を聞くことが普通になっていることなどがお二人から語られました。
また、桂さんは当館をよく利用してくださっていて、会場になったホームギャラリーも、ジェームズ・タレルの光の天蓋があり、マリーナ・アブラモヴィッチの本棚があるからこそこの空間が人々が行き交う場になり得ていること、子育てひろばからこどもの声が聞こえるこの場所で建築のトークができることがコモンズであると言っていただきました。
また、以前の低いソファから、クラウドファンディングで建築家の西澤徹夫さんに設計してもらったテーブルへ、家具が変わることでも、利用する人や利用の仕方も変わるなどことも話していただきました。
100人を超える方々がトークを夢中で聞いているホームギャラリーは、温かい一体感に包まれていました。
これからも、当館も「小さな風景」として、市民の皆さんと一緒にコモニングしていければと思います。
(120人)