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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

G3 vol.133 高浜寛のマンガに登場するアイテムで読み解く19世紀末展 見どころ①

2020.02.29 , ,

コロナウイルス感染拡大防止のため、残念ながら当面閉館となりましたので、開催中の展覧会「高浜寛のマンガに登場するアイテムで読み解く19世紀末(ベル・エポック)-『ニュクスの角灯』、『蝶のみちゆき』…」展の再開を待って下さっている皆様に、見どころを担当学芸員がご紹介していきたいと思います(不定期連載)。

まずは、展覧会入口。2枚のバナーがあります。正面が主人公の美世(みよ)ちゃん。左壁はジュディットです。これは、実は5点組のバナーと原画のセットです(会場入ると続きがあります)。

これらのイラストレーションは、『ニュクスの角灯』の主要登場人物の、物語のはじまる数年前(1878年の数年前)の暮らしの一場面を描いたものです。
本展のこのセットは、高浜先生のメディア芸術祭マンガ部門「優秀賞」受賞に伴う特別展示として、表参道ヒルズ吹き抜けの巨大モニターで展示された描き下ろしイラストとその原画を活用し、特別展示「高浜寛『ニュクスの角灯』-時代をみつめる-」(羽田空港国際線旅客ターミナル5階ラウンジフロア)に出品されたもので、九州・熊本初公開です(本展出品番号15-20、CG-ARTS所蔵)。

これらのバナーに描かれるのは、美世、たま、百年とヴィクトール、ジュディット、民平と、『ニュクスの角灯』読者の皆様にはお馴染みのキャラクターなのですが、民平のバナーに注目です。右後方には、なんと!海で行方不明になった父親が登場しています。民平もまだ顔に怪我をしていません…!天草の海で、親子で漁をしている様子が描かれています。当時は銛突漁と八田網による漁が盛んだったようで、彼らもそういう装備を手にしています。

さて、実のところ本展は、長い時間軸を意識して構成されています。というのも、展覧会準備中に発せられた高浜先生の「クロニクルとして見せたい」という思いを反映しており、「蝶のみちゆき」から「扇島歳時記」へ、そして「ニュクスの角灯」の数年前、「ニュクスの角灯」へと、幕末から明治初期、その後と、それぞれの作品の登場人物が重なりながら続く時間の流れが存在します。
これらのバナーも、そういう時間の流れからふと一瞬浮かび上がったキャラクター達の暮らしの一場面です。本展のタイトルにもある「マンガに登場するアイテム」がとても重要な役割を果たしていることにも気づいていただけるのではないでしょうか。

追記:
今月発売の『コミック乱』4月号に連載中の「扇島歳時記」にて、当館で行ったプレイベント「高浜寛先生、熊本市現代美術館での個展開催決定記念 おたくのぶさい家猫、マンガに描きます」に全国からご応募いただいたなかから厳選された3匹の猫が登場しています!どの猫も大変魅力的です…ぜひご覧ください!

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