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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

G3 vol.133 高浜寛のマンガに登場するアイテムで読み解く19世紀末展 見どころ④

2020.03.07 , ,

コロナウイルス感染拡大防止のため、残念ながら当面閉館となりましたので、開催中の展覧会「高浜寛のマンガに登場するアイテムで読み解く19世紀末(ベル・エポック)-『ニュクスの角灯』、『蝶のみちゆき』…」展の再開を待って下さっている皆様に、見どころを担当学芸員がご紹介していきたいと思います(不定期連載)。

③に引き続き、連載中の新作「扇島歳時記」にフォーカスしたゾーンより見どころを紹介します。

「扇島歳時記」第1話(『コミック乱』2020年1月号掲載)の冒頭は、ギャッギャッと鳴く空を飛ぶ鳥の群れに主人公のたまが話しかけるシーンから始まります。度々話かける鳥のブローチはどうやら彼女のイマジナリーフレンドのようですが、高浜先生によると、これらの鳥はトンビとのこと。寒くなると暖地に移動し、漁港に多く生息するそうです。長崎や天草で暮らす方々には、馴染みの風物詩なのかもしれませんね。筆者も先だって天草に本展の作品集荷に行った時、道路を占領するトンビ数羽に遭遇。すごく大きいし、伸び伸びと暮らしている…!
さて、このトンビは、たまの心の内を象徴する重要なアイテムとして作中折々に存在感を示しているのですが、そのモデルとなった鳥のブローチ(出品番号14)がこちらです。面のふっくらとしたカーブが鳥のからだつきをよく表現しています。

現代のものですが、むしろ現代だからこそトンビというモチーフが選ばれたのかもしれません。空を高く飛ぶ鳥は、心の解放や愛の高まりを喩える時に、現代の表現者達も好んで用いています(井上雄彦のマンガ「バガボンド」とか)。

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