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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

ライフ展連載⑪ 片山真理

2020.05.19 ,

病気のため9歳のときに両足を離断した片山真理(1987-)は、その独特な身体をもった一人の女性の人生を、現代アーティストとしての視点からみつめています。

《you’re mine》は、「普通でない」身体を自覚的に作品化する一方で、「普通である」ことを目指して、人や社会を観察してその真似を続けてきた自身の中に起こる分断や葛藤を含めた自身の代表作です。《小さなハイヒールを履く私》《子供の足の私》は東京藝大大学院の修了作品。狭い自室の中で、片山さんは子ども時代の義足や、小さなハイヒールを身につけています。そのアンバランスさはこれから社会へと出ていく当時の状況を率直に表しているのでしょうか?その後、片山さんはアーツ前橋での滞在制作《30 days in tatsumachi studio》等を経て、屋外での撮影へと移行していきます。

 

「帰途」という意味を持つ《on the way home》は、故郷である群馬の渡良瀬川にかかる橋で撮影しました。川によって分かれた二つの土地を行き来するために架けられた橋は、「普通」と「普通でない」自分を行き来してきた自身の道のりに重なっています。この時、片山は現在2歳になる長女を妊娠していました。

最新作の《cannot turn the clock back-surface》や、足尾銅山で起こった鉱毒事件や水の問題に着目した《in the water》で、片山はオブジェや装飾のない自身の身体そのものを媒介として、土地の歴史や過去についての視線を向けています。

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