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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

ライフ展連載⑮ ソフィ・カル

2020.05.25 ,

フランスを代表する現代アーティスト、ソフィ・カル(1953 -)の《盲目の人々》は、

生まれつき目の不自由な人に「美のイメージとは何か」と尋ね、その対話を写真と言葉で

表現したインスタレーションだ。本作は、私たちが普段、何かを「見ている」と思いながら、

実は何も「見ていない」ということに気づかせ、「美」とはその人の生き方や考え方の中から、

生み出されてくる事を教えてくれる。

作品は、カルが撮影した語り手のポートレート写真と、語られた言葉をテキスト化したもの、

そして、その話を聞いて、カル自身がイメージを想像して撮るなどした人や物、風景の写真

によって構成される。

しかし、この作品自体を、視覚に障害のある語り手自身は、見る事はできない。

それは、自己と他者のコミュニケーションの限界を示すものだが、決して皮肉なことではない。

その限界を知ることから、すべては始まるのだ。人と人は様々なものを分かち合い、

補い合おうとすることで、また、新たなコミュニケーションが生まれてくるのである。

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