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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

熊本市現代美術館の新たなミッションとビジョンをご紹介します。

2020.08.25

この度、2020年度からの「熊本市」にある「現代の美術館」としての使命と、あるべき姿を検証し、新しいミッションとビジョンとして整理しましたのでご紹介します。
https://www.camk.jp/about/museum/

 

【ミッション(使命)】
熊本市現代美術館は、
多様なものを受け入れる寛容なまちと
市民が心豊かに生きることができる未来を
創造します。

 

【ビジョン(中長期的にめざす将来の姿)】
熊本市現代美術館は、
一人ひとりの市民にとって、なくてはならない「現代の美術館」をめざします。
① 日常的に多様な文化に触れることのできる場となります。
② 心を揺さぶられるさまざまな機会をつくります。
③ 市民とともにまちの未来について考え続けます。

 

2016年熊本地震の時、故 桜井館長は「美術館を美術館として開ける」ことにこだわりました。
これは、市民の気持ちを明るくする話題を、市民にひととき地震を忘れる時間を、市民にほっとできる場を、美術館としてできる全てのことを全ての「市民」に提供したいという、桜井館長の強い意志でした。

今回、新たにしたミッションとビジョンは、これまでの理念や方向性を大きく変えるものではありません。
美術館が皆さんと何をしたいと思っているのか、皆さんにとってどんな美術館になりたいのか、改めて皆さんと共有するために書き下したものです。

今、私たちは1ヶ月後の未来すら予測しづらい中で生活しています。
先の見えない不安によって、私たちの心は硬く縮こまっているように感じます。
新型コロナウィルス感染拡大防止に向けた対策も、自分の尺度と少しでも違うことには非難の目を向けてしまいがちです。
でも、生活環境や家族構成が違えば、実は生活様式や考え方は違って当然なのだと思います。
「違う」ことを理解しようとすること、心に受け入れること。
「違う」ことは「悪いこと」「間違っていること」とイコールではないはずです。
私たちに今必要なのは、柔らかい心と冷静な思考を取り戻すことなのかもしれません。

そもそも、美術館は、他人(アーティスト)の想像力によって作られた創造物を、直に体感することができる場所です。
自分と同じ考えが具現化されている作品への共感や歓喜、目からウロコが落ちるような驚きや気づき、全く理解できない表現や考え方に対する戸惑いや好奇心、嫌悪感の理由も含めて、たくさんの「なるほど!」や「そうそう!」や「なぜ?」を受け入れ、心の揺らぎを面白がってほしいと思います。

また、熊本市現代美術館は、ゆっくりと何も考えずに、疲れた気持ちがほどけるような時間を過ごしていただける場でもありたい。「このためにある」と目的を限定せずに一人ひとりが用途に合わせて利用できる美術館でありたいと思っています。

私たちは誰も、時を止めて立ち止まることはできません。
だからこそ、熊本市現代美術館は「今」、「ここ」にある「現代の美術館」として、辛いときや悲しいときも、前を向いて未来に踏み出す術を皆さんと一緒に考えていきたい。そしてもちろん嬉しいときは、その喜びを皆さんと分かち合える美術館でありたいと願っています。

試行錯誤もあるかもしれません。
時間が掛かるかもしれませんが、一歩一歩、ともにこのコロナ禍を乗り越えていきましょう。
これからも、熊本市現代美術館をどうぞよろしくお願いいたします。

 

2020年8月25日
熊本市現代美術館 副館長 岩崎千夏

 

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