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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」が開幕しました。

2020.11.15 , ,

11月14日(土)に「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」が開幕しました。

ムーミンのふるさと、フィンランドは、国連がおこなっている「世界幸福度調査」で、3年連続世界一の国です。
幸福度ナンバーワンの国として、政府観光局が発信した「フィンランド式の心を落ち着かせる5つの方法」は、アイススイミング、読書、森の散歩、美味しいひととき、そしてアート。
それぞれの理由は、冷たい水からあがって身体がポカポカしてきたときの高揚感、読書によって知らないことを知る喜び、自然の中での安らぎ、美味しいものを親しい人と分け合える満足感、アートで気持ちを表現したり、居心地の良い空間をつくったりすることによる心の充足。
つまり、自分の心を如何に健やかに豊かに保つかが幸福度アップの秘訣ですよ、と教えてくれているのです。

ムーミンもしばしば、考えすぎるほど考える哲学家です。それは、人と向き合うために、まず自分と丁寧に向き合って心を落ち着かせるフィンランドの人々そのもの。
きっとムーミンも、冷たい川で泳ぎ、読書や散歩をし、親しい人と美味しいものを囲み、地面に絵を描いたり、歌を歌ったり部屋にアートを飾ったりしながら心を落ち着け、気持ちを整理しているのではないでしょうか。
実は作者であるトーベ・ヤンソン自身も典型的なフィンランドマインドの持ち主であり、彼女の物語や原画のひとつひとつから滲んでいるそのマインドこそが、ムーミンが75年経った今も世界中の人から愛され、フィンランドが3年連続幸福度世界一の国になる理由なのではないかと思います。

今、世界中で非寛容がじわじわと蔓延しているようです。
新型コロナウイルスの感染拡大は、人々の不安を増幅し、感染への恐怖は他人に対する厳しい視線や批判となり、自粛警察という言葉まで生まれました。
でも、人を否定したり非難したりすることで不安は解消するでしょうか?

新型コロナウイルスとの共存生活はもうしばらく続くでしょう。先が判らないことは確かに不安です。
でも本当に大事なのは、人と自分の違いではなく、自分がどう健やかで豊かな心身を保つかということ。
ぜひムーミンから不安に打ち勝つ強さと、違う誰かを受け入れる優しさを学んでいただければと思います。

「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」は大人が幸福になるための展覧会です。
コロナ禍でなかなか見なくなった展覧会に並ぶ列、そして皆さんの楽しそうな笑顔。
私たちも来場する皆さまから、日々幸せをいただいています。
美術館に来られた皆さまが、来られた時よりもっと幸せになって帰られますように!

 

2020年11月15日
熊本市現代美術館副館長 岩崎千夏

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