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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

「PAPER:かみと現代美術」館長挨拶

2022.09.30 , , ,

開会式では出品作家の安部典子さんから「(担当)キュレーター自身が〈かみ〉のようだ」という話がありました。今回は、「かみ」というキーワードで岩崎学芸員がリサーチをし、セレクトした9名の作家たちが参加しています。美術館という箱があり、そこには学芸員がいて、展覧会を企画し、作家をリサーチして、作家と話をしながら過去作や新作の出品を検討し、そしてグループ展の場合は全体のバランスをしっかりと考えて会場を構成し、そして展覧会ができあがります。展覧会の初日に行き着くまで、いろいろな議論ややりとりがあったと思います。
そして展覧会が開幕したら観客が入ります。熊本市現代美術館に何度も来ている人、毎回来ている人、ひょっとしたら「かみ」をきっかけに初めて来る人、熊本で観光してみようかなと足を伸ばす人、いろいろな人が来ます。熊本県外の方々も来ると思います。そうして文化というものが人をつないでいき、熊本の地域性、もっといえば日本の現代を発信していきます。熊本市現代美術館がそうした拠点となり、新しい出会いを築く方々もたくさんいると思います。
 世界には様々な問題を起こっていますし、新しい生活様式というものを受け入れていかざるをえない状況の中でのアートの役割があります。多くの社会的な課題というものは、ほとんど人間が起こしています。その人間の心を動かす力がアートにはある。政府が対策を練って社会課題を解決したり、医者が体を治したりするように、アートには人間の社会を変えていく力があり、展覧会はその一つの形だと思います。

グループ展のおもしろい魅力は、この9名の作家たちのほとんどは、はじめてこの展覧会で知り合ったというところです。「かみ」を通して出会うことができたわけです。企画した岩崎学芸員と展覧会をつくってきた時間が、互いに成長させる大きなきっかけになったと思います。
私も2007年に熊本市現代美術館で展覧会をしましたが、自分が展覧会をやった美術館というのは、自分の家のような気がします。担当学芸員は自分の相談相手になっています。
熊本市現代美術館も作家の方々も、この展覧会を機会に成長していくと思います。

日比野克彦

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