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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

熊本市現代美術館×くまモン夢学校
GIII vol. 146 Our Attitudes[ワークショップ]
絵で絵をつくる――かたちを探して世界を描こう

2022.10.29 , ,

「Our Attitudes」関連イベントとして、出品作家の坂本夏子さんを講師に迎えワークショップを開催しました。


まずはパウル・クレーやパブロ・ピカソ、ヒルマ・アフ・クリントなどの作品を見ながら、これらの絵がどのような要素で出来上がっているかを参加者全員で話していきます。
丸、三角、四角などの図形から、建物、葉っぱなどの具体的なものの名前、黄色や緑色など印象的な色について話しが出ました。
改めてじっくり観察していくと、どんなに複雑に見える作品でも形や色の組み合わせでできていることが分かります。


このワークショップでは、「木炭」という一本で黒から灰色まで豊かなモノトーンの世界を表現できる画材と、さまざまな「かたち」を組み合わせ、一枚の絵を描いていきます。
絵を描く前に「かたち」の型づくりをします。
今回作る「かたち」は4種類。
1. フリーハンドで描いたかたち
2. 定規などの道具を使って描いたかたち
3. 室内にある立体物(人、机、椅子など)の輪郭線を描いたかたち
4. さまざまな本に掲載されているものから写し取ったかたち
坂本さんが型作りのお手本を披露してくださいました。


型が出来上がったら木炭の使い方の説明が始まります。
学校などでデッサンをする際に触ったことがあるという参加者の方もいましたが、ほとんどの方は木炭という画材に触れるのは初めてのようでした。
木炭にもいろんな種類がありますが、今回のワークショップでは描き心地が柔らかで濃い色の出るヤナギ炭、描き心地が硬めで淡い色を表現できるミズキ炭の2種類を使用。
寝かせて使うことで広い範囲を一気に塗ったり、木炭を指やガーゼでこすることにより紙に定着させ、色を作ったりすることなど、実演を交えながらお話がありました。


いよいよ4つの型作り、そしてその「かたち」を使った作品制作が始まります。
おもしろそうだと思う形の見つけ方はひとそれぞれ。
一緒に参加した友人や家族から形を抽出する人もいれば、美術館内を歩いて形を見つける人、机の保護のために敷いた新聞紙から形を取る人……さまざまです。
アートラボマーケットは出入り口が開けた空間であることも手伝ってか、型作りからのびのびと制作されているように感じました。


「かたち」を使っていよいよ絵作りが開始してからは、木炭の扱いに不慣れな方には坂本さんからのアドバイスがありました。
ある程度指などで定着させないとポロポロと炭が落ちてしまうのも木炭という画材の大きな特徴の一つです。
会場の中は紙に木炭がすれる音が響き渡っていました。皆さんがとても集中して制作されていることが伝わってきます。


制作の中盤では、途中経過を全員で見る時間もありました。
型の中を木炭で真っ黒に塗りつぶしている人もいれば、グラデーションを上手に使って描いている人、縁取りを生かした絵作りをする人、型に固定されずフリーハンドも交えて制作する人など、それぞれ描き方が大きく違います。
自分以外の参加者のみなさんの表現方法から刺激を貰い、完成に向けて手を大きく動かしていきます。


制作終了後は完成した絵を全員で見ながら感想を一言ずつ話していただきました。
1枚だけでは満足できず、他の表現方法も試して2枚描いた方もいれば、本日の講師である坂本さんの作品に興味を持ち、その制作プロセスに今回のワークショップをとおして少し触れられた気がするという方、形の組み合わせに苦労した方もいれば、「かたち」を限定したことで普段よりのびのび制作できた方もいました。


新型コロナウイルス感染症が流行し、素手で何かに触れることが忌避されるようになった現在だからこそ、木炭という自分の指先、掌まで使用して描く画材を使用するワークショップは面白いのではないかと坂本さんがこのワークショップの導入で話されていました。
どの方も手が真っ黒になるまで熱中して制作をした本ワークショップ。
みなさん終わった後はやりきった表情をされていました。

【参加数18名】

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