ライフ2 すべては君の未来

ライフ2 すべては君の未来
分身ロボットからアール・ブリュット、現代の写真やアートまで、10組の表現者と描きだす希望

2024年10月5日()〜 12月8日(

2020年に開催した「ライフ 生きることは、表現すること」展は、作品を通して「弱さ」の中にある、私たちが大切にすべき価値観について問いかけるものでした。あれから4年。私たちは、様々な地震や災害、また地球規模での新型コロナウイルス感染症を経験した時代に生きています。
そして、世の中は、さらに答えのない、予測不能な時代に向かっています。続編となる本展では、孤独や不自由さ、また容易に答えの出ない、矛盾に満ちた状況に向かい合いながらも、喜びや希望を忘れず、未来に向かって制作を続けてきた表現者や、それを支える人たちの姿までを含めて紹介します。

出品アーティスト(全10組)

分身ぶんしんロボット OriHimeオリヒメ 荒木あらき 聖憲みのり 曲梶まがりかじ 智恵美ちえみ 駒田こまだ 幸之介こうのすけ 内野うちの 貴信たかのぶ ひがし 勝吉かつきち 齋藤さいとう 陽道はるみち 石川いしかわ 真生まお キュンチョメ、 レインボー 岡山おかやま

展覧会をめぐるキーワードと概要

障害 / 不自由 / 外出困難 / ロボット / テクノロジー / 就労 / アール・ブリュット / ちぎり絵 / 編み物 / 絵画 / 家族 / 支援する人 / 木こり / 老人ホーム / 孤独 / 水彩画 / 故郷 / 仲間 / ろう者 / 写真 / 手話 / 子育て / 沖縄 / 琉球 / 戦争 / 基地 / ミックスレイシャル / ウチナーグチ / 叫び / ビデオ / 性別違和 / 名前 / ユーモア / 虹 / 希望 / 未来…

離れていてもつながり、働く

本展では、まず初めに分身ロボットOriHimeを紹介する。吉藤オリィ(よしふじ・おりぃ 1987年-/東京都在住)が開発したOriHimeには、カメラやマイク、スピーカーが搭載され、外出困難な人であっても、まるでそこにいるかのようにコミュニケーションすることができる。会場内では土日祝の午後を中心にパイロットと呼ばれる操作者が、遠く離れた場所から実際にOriHimeを動かして、来場者とコミュニケーションを取ったり、OriHimeの作品解説を行うなどして、美術館のスタッフとして働くことを実現する。
*OriHimeは株式会社オリィ研究所の登録商標です。

  • 吉藤オリィと分身ロボットOriHime

私という存在の証明

続いて、アール・ブリュットの4人のアーティストに注目する。自身の思いをのせた緻密なちぎり絵で風景や想像の世界を描く荒木聖憲(あらき・みのり 1994年-/玉名市在住)、毛糸などのモチーフを重層的に組み合わせ心のありようを紡ぐ曲梶智恵美(まがりかじ・ちえみ1981年-/熊本市在住)、紙の幅や裏表を自由に飛び超えて心地よいリズムにのせてペンを走らせる駒田幸之介(こまだ・こうのすけ 1989年-/熊本市在住)、日常の体験や発見をポップで明るい色彩と明快なフォルムで描く内野貴信(うちの・たかのぶ 1974年-/熊本市在住)である。熊本で「アール・ブリュット」という言葉が広く知られるようになったのは、今年で10周年を迎え作家の発掘や支援を続ける「アール・ブリュット パートナーズ熊本」の存在が大きい。家族や施設スタッフとともに彼・彼女らの表現を後押しし、成長を見守ってきた多くの人たちの姿が作品の陰に滲む。

  • 内野貴信(参考作品)
  • 荒木聖憲《星月夜の歌姫》2020年
  • 曲梶智恵美《invisible view》2022年
  • 駒田幸之介《無題》2021年、社会福祉法人 寿量会蔵

素晴らしい孤独がここにある

東勝吉(ひがし・かつきち 1908-2007年/大分県で没)は、大分で長く木こりとして働いた後、由布市の老人ホームに入所していた。これといった趣味もなかったが、83歳のある日、絵の具セットを贈られたことをきっかけに、カレンダーや新聞の切り抜きを見ながら由布院の風景を猛然と描き始め、99歳で亡くなるまでの16年間で100点以上の水彩画を残した。その東の作品に感銘を受けた由布院の人々は、NPO法人由布院アートストックを立ち上げ、作品の保存や展示活動に取り組んでいる。例え無名で孤独であったとしても、誰かの心をゆさぶる作品を描くことができ、何かを始めるのに遅すぎるということはないことを、東の作品は教えてくれる。

  • 東勝吉《由布院の春》1998年、
    NPO法人由布院アートストック蔵

音のない世界から見つける光

齋藤陽道(さいとう・はるみち 1983年-/熊本市在住)は、先天性の感音性難聴をもって生まれ、発音指導などを受けながら一般の小中学校に通っていたが、周りのコミュニケーションについていけず孤独な日々を送っていた。その後、進学した石神井ろう学校で手話に出会って以降、手話の持つ世界の奥深さに魅了され、「ろう者」として生きていくことを決め、写真家としての活動を始める。本展では、齋藤が出会った障害のある人や、そうでない人の姿、そして生き物や自然の風景などを、等しく透明感あふれる眼差しで切り取った代表作「感動」シリーズを軸に、その作品世界を紹介する。

  • 齋藤陽道「感動」シリーズより、2011年、
    発色現像方式印画、東京都写真美術館蔵

生きる限り沖縄を撮り続ける

石川真生(いしかわ・まお 1953年-/沖縄県在住)は、WORKSHOP写真学校東松照明教室で写真を学び、70年代以降、沖縄をめぐる人々に密着しながら作品を制作してきた。被写体となる人々と正面から対峙し、立場を越えて取材することで、沖縄の生々しくかつ複雑な現実を写しだす。
本展では、米軍基地勤務の黒人兵のためのバーで働きながら同僚の女性たちを撮影した初期の代表作「赤花 アカバナー 沖縄の女」のほか、「沖縄芝居」「港町エレジー」「ヘリ基地建設に揺れるシマ」「大琉球写真絵巻」(Part1)等のシリーズを展示する。

  • 石川真生「赤花 アカバナー 沖縄の女」シリーズより、
    1975-1977年

私が決めた 私の名前を 声枯れるまで 大きな声で叫ぼう

キュンチョメ(ホンマエリ 1987年-、ナブチ 1984年-/神奈川県在住)は、制作行為を「新しい祈り」であるととらえ、世界各地でそこに関わる人々と向き合い、時にユーモアを交えながら、様々な社会問題をテーマとした作品を発表してきた。近年はフィリピンやハワイに滞在し、圧倒的な自然や多様な価値観に触れることで更に表現の幅を広げている。本展で紹介するビデオ作品《声枯れるまで》(2019年)では、出生時の性別に違和感を持ち、自らに新たな名前をつけた人たちとキュンチョメが対話を重ねる様子が描かれる。共に時間を過ごしながら、その新しい名前を世界に響きわたらせるために、一緒になって何度も何度も、声枯れるまで叫ぶ。

  • キュンチョメ《声枯れるまで》2019年

虹をかける人

この世には「虹をかけること」を仕事にする人がいる。
レインボー岡山(1962年-/阿蘇郡在住)は、熊本市現代美術館の開館記念展「ATTITUDE2002」にレインボーマンとして登場して以来、20年以上、様々な場所に虹をかけ続けている。その虹は、風船やビニール製のテープなど、安価な材料を用いて岡山がデザインを行い、その場に集まった人たちが互いに協力し合うことで、ダイナミックな風景が出現する。
空にかかる虹は、あらゆる人に等しく開かれている。そして私たちには、例え小さくとも世の中に虹をかけることのできる力が備わっているということを、レインボー岡山は気づかせてくれる。

  • レインボー岡山 🄫Hiroshi Sugahara

展覧会情報

展覧会名:

ライフ2 すべては君の未来

開催期間:

2024年10月5日()- 12月8日() 56日間

会場:

熊本市現代美術館 熊本市中央区上通町2-3 びぷれす熊日会館3階

開館時間:

10:00–20:00(展覧会入場は19:30まで)

休館日:

火曜日

観覧料:

一般:
1,300(1,100)円
シニア(65歳以上):
1,000(800)円
学生(高校生以上):
800(600)円
中学生以下:
無料

※前売券は10月4日(金)まで販売
※各種障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳等)をご提示の方とその付き添い1名は無料
※うぇるかむパスポートをご提示の方は無料
※10月12日(土)は開館記念日につき入場無料
※( )は前売料金。前売料金は下記にも適応。
20名以上の団体/電車・バス1日乗車券、市電みどりのじゅうたんサポーター証、熊本県立美術館友の会証、JAF会員証をご提示の方

主催:

熊本市現代美術館[熊本市、公益財団法人熊本市美術文化振興財団]、熊本日日新聞社

助成:

一般財団法人地域創造、公益財団法人小笠原敏晶記念財団

協力:

アール・ブリュット パートナーズ熊本、NPO法人 由布院アートストック

後援:

熊本県、熊本県教育委員会、熊本市教育委員会、熊本県文化協会、熊本県美術家連盟、熊本国際観光コンベンション協会、NHK熊本放送局、J:COM熊本、エフエム熊本、FM791

プレスリリース: