くまもと21の会との共催で、石原靖也さんと田中一平さんの対談をおこないました。
タイトルは「市民の力で地域の文化を創る~熊本暮らし人まつり みずあかり~」。市民の力で20年間続いてきたまつり「熊本暮らし人まつり みずあかり」を軸に、熊本の文化について話していただきました。
まず、「みずあかり」の創始者である石原靖也さんより、「みずあかり」の立ち上げ時のエピソードをお聞きしました。九州新幹線の開通に合わせて新しいまつりをつくろうと検討した際に、ある女性から「喜びと、切なさまでも感じられるようなまつりにしてほしい」と言われたこと。ある人からは「熊本は行政などから金が落ちてくるのを待っているもらいもん文化だ」と言われて、市民の文化力を1cmでも上げたいと思ったこと。まつりの名前を歌人の安永蕗子さんに書いてもらいたいとお願いしに行ったら、偶然安永さんには『みずあかりの記』という素晴らしい著作があったこと等をお聞きしました。
また、「みずあかり」の運営について、寄付は一口2万円までと決めて、できるだけ関わる人を増やしたこと、たくさんの人に関わっていただくことで行政に頼らないボランティアによる地道な作業を実現し続けてきたこと等をお聞きしました。
もう一人の登壇者である田中一平さんは、熊本で「薬を処方するように文化を処方する」ことによる効果を研究するために、今年度東京藝術大学から熊本大学に出向しておられます。「文化的処方とはなんなのか」或いは「そもそも文化とはなんなのか、文化と文明の違いとは」といった視点から「みずあかり」をひもといていただきました。
文化的処方とは、文化やそれに基づく考え方に触れることによって、自分や他者とのつながりが生まれ、望まない孤独や孤立を和らげたり、ウェルビーイングにつながったりするのではないかという仮説に基づいた研究で、今年度から東京藝術大学、熊本大学、熊本市、熊本市現代美術館が協力しながら「熊本版文化的処方」の研究、開発を始めています。
現代社会において、答えではなく問いを提示するアートにどう触れるか。問いと向き合うことによる心の豊かさに対する効果や自覚などについて、これからさまざまな機会を設けて市民の皆さんと一緒に考えていきたいと思います。(100名)