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美術館の日常のあれこれをお伝えします。

「ドレス・コード?――着る人たちのゲーム」
[レクチャー]石関亮、牧口千夏

2019.12.08 , , , ,

「ドレス・コード?――着る人たちのゲーム」開幕初日、本展企画者のうち、石関亮さん(京都服飾文化研究財団キュレーター)、牧口千夏さん(京都国立近代美術館主任研究員)の二人によるレクチャーを開催しました。


まずは石関さんから、京都服飾文化研究財団(以下、KCI)の設立趣旨や活動内容、京都国立近代美術館とこれまで共催してきた展覧会の紹介がありました。1980年から5年ごとに企画してきたファッション展は、今回で8回目。これまで開催されてきたファッション展の多くは、デザイナーやブランドを取り上げていますが、本展では服を着ている私たちに注目し、一線を画す展覧会を目指したことが話されました。

次に、本展を構成している13のセクション(「ドレス・コード?」)について掘り下げていきました。
セクション「高貴なふるまいをしなければならない?」では、KCIが所蔵する18世紀フランスの宮廷服と坂本眞一さんによるマンガ『イノサン』『イノサンRouge ルージュ』とのコラボレーション作品が紹介されました。18世紀のフランスでは、どのような「ドレス・コード」があったのか、階級と性別と衣服の関係について話されました。
セクション「組織のルールを守らなければならない?」では、会場でもずらっと並んだスーツ群や、学生服といった私たちの非常に身近なユニフォームの役割とデザイナーによる展開についての話がありました。


その後も、デニム、トレンチ、ロゴといったさまざまなファッションのアイテムについて、各セクションタイトルに基づく「ドレス・コード」とともに紹介されました。

続く、アート作品を参照したファッションが多く出品されているセクション「教養は身に着けなければならない?」からは、牧口さんによる話がありました。


イブ・サンローランによるモンドリアン・ルックをはじめ、ファッション史を振り返ってみても、アート作品を取り入れたファションはこれまでにも登場していますが、展覧会のリサーチをしていた2010年代後半にも、同様にアートを取り入れているファッションが多く見受けられたそうです。その現象は一体何なのか?アートを身につけるというのはどういうことなのか?という問いがここでは投げかけられています。
単純に、アート作品と服が影響関係にあるというだけではなく、「着る人」や「所有する人」にも着目したとき、それはアートをどのように捉えているのか?といった現代における美術が求められる役割についても言及することになり、本セクションのタイトルを考えられたそうです。

その後のセクションについても、2017年に女優たちがブラックドレスを着た#MeToo運動や、ハンス・エイケルブームや元田敬三、都築響一によるストリートスナップによる視点、役を演じる演劇とファッションとの類似性など、ファッションそのものだけではなく、服を着ている私たちを取り巻く問題との関わりについても示唆する内容が話されました。

13のセクションについて話した後、その前段階となった展覧会構成が実は存在していたという話がありました。
もともとは、I. 「型」のなかの自由 II. 「脱色/越境」することで生まれる自由 III. 着ることの可能性の三部構成で企画していたものを、各アイテム単位に解体し、それらを時間軸に置き直すことで、展覧会としてのフィクションの歴史・物語をつくることにしたそうです。13のセクションで示された展覧会は別の視点でも読み解けることが話されました。また京都会場の図面をもとに、それらをいかに配置していったかも具体的に明かされました。

これまでのファッション展をふまえ、新たに本展を立ち上げた企画者の2人から、展覧会が開催されるまでの企画の過程や現在の展示構成にいたるまで、展覧会そのものが持ち合わせている様々なコードについて、話を聞くことができました。
展覧会は「観る人」である来館者あってこそ。企画者たちが投げかける問題提起に、会場で、街で、どのような反応があるのでしょうか。

【参加人数60人


ドレス・コード?――着る人たちのゲーム

会期:2019年12月8日(日)~ 2020年2月23日(日)
会場:熊本市現代美術館 ギャラリーI・II
特設ウェブサイト:https://www.kci.or.jp/special/exhibitions2019/

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