
遠山昇司展 収蔵庫の鳥たち
2025.10.5(日)〜 2025.12.14(日)
熊本県八代市出身の映画監督・遠山昇司は、これまで地域にフォーカスした劇映画を制作すると同時に、アートプロジェクトや舞台作品、芸術祭の統括ディレクターなど多彩な活動を続けてきました。本展は、美術館に眠る収蔵品から、自身の映画やアートプロジェクトまでを、「鳥」を切り口として、遠山が新たな視点で再構成するインスタレーション形式の個展となります。
海の上の小学校を郵便局に見立て、手紙の交換をするアートプロジェクト「赤崎水曜日郵便局」、豪雨災害後の球磨川を撮った映画「あの子の夢を水に流して」などの代表作から、シベリア抑留体験を絵画にした画家・宮崎静夫の描く鳥にスポットを当てた新作インスタレーション「鶴をひらく」、及び展覧会タイトルでもある「収蔵庫の鳥たち」を展示します。併せて、熊本県立小国高等学校の生徒の皆さんと共同制作した映像作品「しろい息」までを、どうぞお楽しみください。
主な出品作品と会場構成
映画監督・遠山昇司が世界を「鳥(トリ)ミング」する
美術館に眠る収蔵品から、自身の過去の映画作品やアートプロジェクトまでを、遠山昇司が「鳥」を切り口として、新たな視点で再構成するインスタレーション形式の個展。
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アートプロジェクト「赤崎水曜日郵便局」
あなたの水曜日を送ると、誰かの水曜日が届きます
2013年に熊本県津奈木町で実施されたアートプロジェクト。海の上に立つ旧・赤崎小学校を水曜日だけ開局する郵便局に見立て「葦北郡津奈木町福浜165番地その先」の住所に、水曜日の物語を書いて送ると、見知らぬ誰かの手紙が交換されて送られてくるプロジェクト。遠山は全体のディレクションと水曜日郵便局の局長を務めた。また、2016年には宮城県東松島市で「鮫ヶ浦水曜日郵便局」も開局した。(2013~2016年)
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アートプロジェクト「ポイントホープ」
物語の始まりは「029-284-1900」という電話番号
2017年に水戸市で実施された遠山ディレクションのアートプロジェクト。国内の公衆電話から指定された電話番号(029-284-1900)に電話をかけると、2人の女性の声で序章が語られる。参加費を支払うと、地図と500円分のオリジナルテレホンカードが届き、参加者は地図に指定された水戸市内の公衆電話4カ所を回って電話をかけ、物語をたどった。(2017~2018年)
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映画「NOT LONG, AT NIGHT 夜は長くない」
熊本・天草を舞台にしたロードムービー
ある日、一人の女性が34年間貯め続けてきた様々なものを捨て、車を盗み旅に出た。海へと向かう旅の中で、彼女は多くの出会いと別れを繰り返していく。第25回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門出品作品。(2012年制作)
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映画「あの子の夢を水に流して」
豪雨災害後の球磨川を舞台に描く「生命」をめぐる物語
生まれて間もない息子を亡くして失意の底にいる37歳の瑞波は、故郷の八代に10年ぶりに帰省する。幼なじみと再会した彼女は、彼らとともに豪雨災害の傷跡が残る球磨川をめぐる。川を前に、災害当時それぞれが見たものを語りあう3人は、やがて不思議な現象に遭遇する。第12回バウネアーリオ・コンボリウー国際映画祭 最優秀監督賞・最優秀演技賞(2022年制作)
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宮崎静夫《道標》1997年、つなぎ美術館蔵 インスタレーション「鶴をひらく」
戦後80年―シベリア抑留画家の思いを映画監督が読み解く
阿蘇郡小国町出身の画家・宮崎静夫が描いた「死者のために」シリーズには、時に死の象徴として、また、シベリアと故郷を自由に行き来する存在として、鳥のモチーフが描かれる。宮崎が作品を通して伝えようとした思いを遠山が読み解き、新たに撮影した久子夫人のインタビュー映像を交えながら、インスタレーション「鶴をひらく」として紹介する。(2025年)
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熊本県博物館ネットワークセンターの鳥類標本(参考写真) インスタレーション「収蔵庫の鳥たち」
映画監督がつくった『展覧会』/ミュージアムと収蔵庫をめぐって
本展リサーチのために熊本県博物館ネットワークセンターを訪れた遠山は、絶滅危惧種やかつて学校の理科室で使われていたものなど、大量の鳥類剥製を実見する。
「ミュージアム」もまた記憶や情報を伝えるメディアであることに着目した遠山は、展覧会そのものを、人々の記憶の「収蔵庫」に見立てることにした。ミュージアムの収蔵庫は、物理的な限界を迎えている。私たちはこれから、何を記憶し、未来へと継承していくのか。本展を通して、遠山は問いかける。(2025年) -
小国高校での「しろい息」撮影風景 映像作品「しろい息」
小国高校生と制作した映像作品
遠山は、本展と同時期に阿蘇郡小国町で開催される地域をフィールドとした芸術祭「小さな国 十月」(10月4日~11月3日)の総合ディレクターも務める。「アートと学びの祭典」を目指す同祭の準備を通して、遠山は小国に残る歴史や文化を知った遠山は、町の教育の重要な拠点である小国高校の生徒たちと共同で、2月の早朝に「しろい息をはく」新作映像の撮影を実施した。「しろい息」は、今を生きる生命の象徴である。その尊さを三好達治の詩「大阿蘇」とともに体感してほしい。(2025年)
本展撮影:森賢一(グラフ)「鶴をひらく」「しろい息」
会場構成:岩田正輝(藤本壮介建築設計事務所)
遠山昇司 Shoji Toyama

映画監督|アートディレクター
1984年 熊本県八代市生まれ、東京在住。
早稲田大学大学院国際情報通信研究科修士課程修了。
主な映画作品に、熊本・天草を舞台にした『NOT LONG, AT NIGHT −夜はながくない−』(制作:2012年/第25回東京国際映画祭〈日本映画・ある視点部門〉出品作品)、熊本豪雨を受けて制作された『あの子の夢を水に流して』(制作:2022年/第12回バウネアーリオ・コンボリウー国際映画祭 最優秀監督賞・最優秀演技賞)等がある。
同時に、映画だけでなく、多様な分野で活動し、アートプロジェクト『赤崎水曜日郵便局』(2013年/2014年グッドデザイン賞受賞)では、熊本県津奈木町にある海に浮かぶ旧赤崎小学校を再利用したプロジェクトは全国的に話題となり、多数のテレビ番組で特集され、書籍化された。また、国内屈指の規模をほこる『さいたま国際芸術祭2020』では統括ディレクターを務めた。
関連開催
展覧会情報
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開催期間
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2025年10月5日(日)~ 2025年12月14日(日)
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休館日
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火曜日
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開館時間
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10:00 ~ 20:00(入場は19:30まで)
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会場
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熊本市現代美術館
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観覧料
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- 一般:
- 1,300(1,100)円
- シニア〔65歳以上〕:
- 1,000(800)円
- 学生〔高校生以上〕:
- 800(600)円
- 中学生以下:
- 無料
*( )内は前売/20名以上の団体/電車・バス1日乗車券、市電緑のじゅうたんサポーター証、熊本県立美術館友の会証、JAF会員証をご提示の料金
* 各種障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳等)をご提示の方とその付き添い1名は無料
*うぇるかむパスポートをご提示の方は無料
*前売券の販売は10月4日(土)まで
*10月12日(日)は開館記念日のため入場無料
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チケット取扱い
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熊本市現代美術館
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主催
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熊本市現代美術館[熊本市、公益財団法人 熊本市美術文化振興財団]、熊本日日新聞社
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助成
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一般財団法人 地域創造、西日本シティ財団、令和7年度地域ゆかりの文化資産を活用した展覧会支援事業
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後援
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熊本県、熊本県教育委員会、熊本市教育委員会、熊本県文化協会、熊本県美術家連盟、熊本国際観光コンベンション協会、J:COM熊本、エフエム熊本、FM791
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協力
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NTT西日本、株式会社パルコ、熊本県博物館ネットワークセンター、熊本県立小国高等学校、熊本中央高等学校 生物探求部、坂本善三美術館、つなぎ美術館
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プレスリリース