九州ゆかりの美術家を紹介する熊本市現代美術館のギャラリーⅢにて、大分出身の諫山元貴(1987年~/広島在住)の個展を開催します。
諫山はこれまで「複製と崩壊」というテーマを軸に、現代社会の合理化がもたらす大量生産・規格化・交換可能性を、映像や立体作品によって批評してきました。型を用いて複製された土の物体が水の中で崩壊していく映像作品では、その制御できない変化の様子を、速度無編集で提示しています。衰えや崩壊、そこに付帯する時間に、オリジナリティの在り処を見出せるのではないか――。
諫山のこの問いは、やがて生命とモノとの間に位置する“羊のドリー”へと導かれました。ドリーは、1996年イギリスで、世界で初めて成体細胞を用いて生まれたクローンの哺乳類です。ドリーを生んだ技術は倫理的な問題を孕みながらも、その後の再生医療の発展といった扉を開け、希望ももたらしています。誕生から30年という節目に、本展はドリーを題材とした作品を通して、生命の複製技術と物象化、その倫理的・社会的意味について再考する場をめざします。静かに崩れゆく諫山のドリーのむこうに、私たちは何を見ることができるのでしょうか。




右上:《Mold(Dolly)》2024 年 レジン 協力:スコットランド国立博物館 hakari contemporary 蔵
左下:《Dummy-Z4Qghq》2024 年 粘土
右下:《Molding(Dolly)》2024 年 粘土 hakari contemporary 蔵
1996年7月5日、クローン羊ドリーがスコットランドのロスリン研究所で誕生してから、今年で30周年を迎える。当時、私は手塚治虫の『火の鳥―生命編』(1980年)を読んでいた。この作品はクローン人間を主題のひとつとして扱っている。今でも、いや、今だからこそ、そこに描かれた人間の「モノ化」―人間が mono として、あるいはひとつの Object として扱われること―に、トラウマのような恐怖を覚える。
ドリーの誕生をめぐっては、それを生み出した、あるいは生み出そうとする技術に対して、何らかの倫理が求められると考えている。しかし、生まれてきた存在そのものに罪はない。
だからこそ、ドリーには素直に「おめでとう」と言いたい。
諫山元貴
作家プロフィール
諫山元貴 (いさやま・げんき)
1987年生まれ。美術家。2014年吉野石膏美術振興財団在外研修助成にてベルリンに滞在、Studio Haegue Yang のレジデンスプログラムに参加。主な展覧会に、「コレクション展 2025-Ⅱ」(特別出品含む)/ 「諫山元貴:ものの次第」( 広島市現代美術館、2025)、「Dolly」(hakari contemporary、京都、2024、キュレーター:鵜尾佳奈)、MOMAS コレクションⅢ期 (特別出品) 」 (埼玉県立近代美術館、2023) 、「Each Day Begins with the Sun Rising」(Benton Museum of Art Pomona College、カリフォルニア、2022)、「高松コンテンポラリーアート・アニュアル vol.11」 (高松市美術館、香川、2022)、「テレポーティング・ランドスケープ」(アートギャラリーミヤウチ、広島、2017)、「Sights and Sounds:Japan」(ユダヤ博物館、ニューヨーク、2016)、など。主な作品収蔵先に広島市現代美術館、ポモナ大学付属ベントン美術館、高松市美術館などがある。主な受賞に「VOCA展 2025」奨励賞、「第2回広島文化新人賞」(2021) 。
展覧会関連イベント
・アーティストトーク
日時 :10 月 31 日(土)13:30 ~ 14:30
会場 :ギャラリーⅢ+井手宣通記念ギャラリー
参加費:無料
・トークイベント
日時 :11 月 23 日(月祝)13:30 ~ 15:00
場所 :ホームギャラリー
登壇 :諫山元貴、清水知子(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授)
参加費:無料
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展覧会情報
展覧会会期 :2026年10月31日(土)―12月27日(日)
開館時間 :10:00 ― 20:00
休館日 :火曜日(11月3日は開館)、11月4日
会場 :ギャラリーⅢ・井手宣通記念ギャラリー
観覧料 :無料
主催 :熊本市現代美術館(熊本市、公益財団法人熊本市美術文化振興財団)
協力 :hakari contemporary(株式会社基住)、アートギャラリーミヤウチ
展覧会チラシ :展覧会チラシ(PDF形式)
Dolly @hakari contemporaryObjects @広島駅地下ショーウィンドウ
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